眠っていた織機が、1,000万枚のロングセラー商品になった理由

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From:通販プロデューサーの西村公児
自宅の仕事部屋にて

ロングセラー商品とは、何年も指名で買い直される商品です。
つまり、お客様が名前で覚えている商品のことです。

では、ロングセラー商品は新作から生まれるのでしょうか。
実は、そうとは限りません。

今日は、止まっていた機械から生まれた話です。
しかも、そのタオルは1,000万枚売れました。

まず、結論を先にお伝えします。
変えたのは商品ではなく、呼び名と売り先でした。

ロングセラー商品とは何か、いま何が起きたのか

ロングセラー商品は、会社が決めるものではありません。
むしろ、お客様が何度も選ぶことで決まります。

そこで、2026年8月の発表を見ます。
大阪のタオルメーカー、丸中のリリースです。

「ビッグフェイスタオル」が累計1,000万枚を突破
出典:株式会社丸中 プレスリリース(PR TIMES・2026年8月4日)

なお、集計期間は2007年7月から2026年6月です。
シリーズ全体では、累計2,000万枚になります。

さらに、レビューは20万件に達しています。
ブランド名は「ヒオリエ」、創業は1959年です。

ところが、出発点は明るくありませんでした。
20年前、海外製の安いタオルに押されていました。

実際、「あと5年ももたない」状況だったそうです。
そこで、会社は自社ECに舵を切りました。

売上ゼロの自社ECと、眠っていた織機

ただし、自社ECの売上は最初ゼロでした。
リリースには、こう書かれています。

2006年に自社ECサイトを立ち上げるも売上はゼロ。受注減少により工場で眠っていた40cm幅の織機を動かすために作ったタオルが、私たちの運命を大きく変えることになります。
出典:同リリース

つまり、新商品を開発したわけではありません。
止まった織機を、動かそうとしただけです。

しかも、そのサイズは幅40cm×長さ100cmです。
業界では「スポーツ用」とされていました。

ロングセラー商品を生んだのは、呼び名と売り先

転機は、業界の外から来たスタッフでした。
このタオルを「家庭用」としてECで売ったのです。

すると、お客様の言葉が集まり始めます。
そのまま、並べてみます。

「洗濯ものがかさばらない」「コンパクトで収納しやすい」「バスタオルより乾きやすい」「普通のハンガーで干せて部屋干しできる」
出典:同リリース

一方、商品のサイズは何も変わっていません。
変わったのは、呼び名と届ける先だけです。

そして、価値を言葉にしたのはお客様でした。
会社のカタログには、なかった言葉です。

手順1 眠っている商品を1つだけ選ぶ

まず、倉庫や棚の奥の商品を1つ選びます。
売れ残りでも、定番落ちでも構いません。

ただし、選ぶのは1つだけにしてください。
複数だと、お客様の声が混ざるからです。

なお、新しく作る必要はありません。
いまあるもので売ることが、この手順の要です。

手順2 お客様の言葉を10個書き出す

次に、レビューと問い合わせを読み返します。
電話のメモや同梱アンケートでも結構です。

そこで拾うのは、使い方の言葉だけです。
「何に使うか」「どこに置くか」を集めます。

一方で、スペックの言葉は脇に置きます。
素材や機能は、会社側の言葉だからです。

手順3 呼び名を、お客様の使い方で付け直す

そのうえで、いちばん多い使い方を選びます。
その使い方で、呼び名を1つ付け直します。

たとえば丸中では、呼び名が変わりました。
スポーツ用が、ビッグフェイスタオルになりました。

さらに、商品ページの1行目も書き換えます。
使う場面が、先に伝わるようにするためです。

手順4 少量のお試しをロングセラー商品の入口にする

また、試しやすい入口を1つ用意します。
丸中の入口は、最初の2枚だけのお試しです。

実際、価格は1枚890円(税込)です。
定価の10%オフで、大きな値引きではありません。

つまり、下げたのは値段より量のほうです。
まず暮らしの中で、使っていただくためです。

手順5 二度目の理由を、お客様の言葉で書く

最後に、二度目のご案内を用意します。
書くときは、使った方の実感を借ります。

たとえば「乾きやすいので洗い替えが楽」です。
会社の言葉より、ずっと遠くまで届きます。

なぜなら、次のお客様も同じ暮らしだからです。
100日ファン化計画でいえば、名付けた日が1日目です。

ですから、二度目のご案内に割引は足しません。
使った方の言葉だけで、十分に届きます。

数字で見るロングセラー商品のいま

ここで、今週の報道も見ておきます。
日本ネット経済新聞が、この会社を取り上げました。

2026年3月期のEC売上高は約26億4000万円で、全体の約80%を占めている
出典:日本ネット経済新聞(2026年9月24日)

つまり、売上ゼロの自社ECが8割を担っています。
しかも、オンライン売上の半数は楽天市場です。

さらに、年商は35億円とされています。
こちらは、8月のリリース時点の数字です。

なお、カラーは全18色まで広がりました。
また、お試しからのリピート率も高いそうです。

『ミニマム通販バイブル』の順番で読む

ここからは、私の読み方です。
拙著『ミニマム通販バイブル』の考え方と重なります。

その書名のとおり、順番は「売ってから、つくる」です。
先に売り、反応を見てから磨き込みます。

だからこそ、ロングセラー商品を新作に求めません。
むしろ、いまある商品の呼び名を疑ってください。

そして、答えはたいていレビューの中にあります。
会社の外に、商品の説明書があるのです。

ですから、新商品の開発を急がなくて結構です。
呼び名を変えるだけなら、今月から始められます。

直線ファネルから、同心円ファネルへ

一方で、直線ファネルは作って売って終わります。
広告で集めて、売り切れば次の新商品です。

そのため、売れなくなるたびに開発が要ります。
しかも、開発には時間もお金もかかります。

これに対して、同心円は言葉で広がります。
お客様の言葉が、次のお客様を連れてきます。

実際、丸中のレビューは20万件に達しました。
その1件1件が、次に買う方の判断材料です。

したがって、集めるべきは広告の数ではありません。
集めて売るの「集める」は、お客様の言葉です。

まとめ|ロングセラー商品は、お客様が名付ける

最後に、今日の要点をまとめます。
丸中のタオルは、累計1,000万枚のロングセラー商品です。

ただし、生まれたのは眠っていた織機からでした。
変えたのは、呼び名と売り先だけです。

まず、眠っている商品を1つ選んでください。
次に、お客様の言葉を10個書き出してください。

そのうえで、呼び名を1つだけ付け直します。
それだけで、ロングセラー商品への入口ができます。

つまり、作って売り切る直線から離れます。
お客様の言葉で育つ、同心円ファネルへ移ります。

そして、いつもの一言で締めます。
1人の熱中が、100人の推し活を生む。

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